公開日 2022/4/23
技術が発展してデジタルの時代になった今、手書きをする機会は減りつつあります。まるで時代遅れのように見えるこの作業は実は多くの効果があります。
このスマホの入力やパソコンのタイピングからは得ることができない、手書きをすることの効果についてご紹介していきます。
頭の中の情報が多すぎて考えがまとまらないときには紙に書きだすのが効果的と言われています。その理由は頭の中の情報を視覚化でき、視覚化した時の自由度が高いからです。
手書きならパソコンと違って面倒な操作をしなくても簡単に自分が思ったように書き出していくことができます。特に手書きはイラストや図を使って書き出すことが出来るので情報の視覚化を簡単に行えます。
矢印を使ったりグループでまとめたりと情報の因果関係を表すことで、さらに新しい発見につながったりすることもあります。イラストを使わなかったとしても箇条書きにして書き出していくだけで情報にまとまりが出てきて見やすさがかなり変わってきます。情報が多くて考えがまとまらないときには紙に書き出してみることを意識してみましょう。
プリンストン大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の共同研究で、15分程度のTEDトークを「手書き」と「タイピング」の二つのグループに分けてメモをとってもらいました。その結果「タイピング」のグループよりも「手書きのグループの方が理解度テストで高いスコアを出しました。一週間後に同じテストをやったところ、やはり手書きのグループの方がスコアが高く、長い間情報を記憶することが出来るとわかりました。
パソコンのタイピングは短時間で文字を素早く打ち込めますが、ただ打ち込むだけの作業になってしまい講義の内容を頭で理解しようとしなくなってしまいます。
一方で手書きの方は一度に記録できる情報量が少ないです。そのため、講義の内容を理解し要約をしなければいけないためタイピングをしている人との理解度の差がついているわけです。
ノルウェー科学技術大学の研究の結果によると手書きのほうが子供の学習能力や記憶力のパフォーマンスを上げることがわかりました。
実験では子供に「手書き」と「タイピング」での脳波の違いを調べ、脳が活性化する際の電気信号を記録しました。その結果、手書きをしている時の方が脳への電気信号の量が多いことがわかりました。そのため手書きをするほうが脳をより活性化させ、学習能力を向上させてくれます。
文字を書くというのは指先を繊細に動かす作業で実は思っているよりも集中力が必要なものなのです。なので手書きをしている最中は多くの脳細胞を刺激していて脳の活性化につながるといわれています。その一方でタイピングやスマホのフリック入力は同じ動作を何度もするだけという作業にとどまってしまうため脳への刺激が少なくなってしまうわけです。
日本語はほかの言語に比べてもひらがな、カタカナ、漢字とたくさんの種類の文字があり書き順やとめ・はね・はらいなど文字を一つ書くだけでも意識しなければいけないことがたくさんあるのでそれだけ脳への刺激が多いといえます。
また、手書きは脳の前頭前野という部分への刺激を与えていることがわかっています。前頭前野は「脳の司令塔」と呼ばれる場所で記憶・コミュニケーション・抑制・集中など多くの能力に関わる重要な場所であり、仕事や日常生活でも多く働かせる部分であるため鍛えることによって大きなメリットがあります。
紙とペンがあれば出来るジャーナリングという方法が心を落ち着かせてくれる作用があると言われています。
ジャーナリングとは一定時間ひたすら頭の中に思い浮かんだことを紙に書き起こしていくというもので、科学的にリラックス効果があるということが判明しています。
テキサス大学の社会心理学者のジェームズ・ペネベーカーによる研究で、失業者に毎日20分ジャーナリングを5日間連続で実践してもらったところ、8ヶ月後の就職率がジャーナリングをしてない人と比べて40%高いことがわかりました。
さらに、ジェームズ・ペネベーカーは別の実験も行っており、学生、囚人、仕事を解雇された人などに過去にあった辛いことなどを書いてもらったところ、書いた直後は幸福度が下がるなどのマイナスの効果が目立ちましたが、長期的に続けていくと精神が安定し、仕事でのミスなども減ったりなど有益な効果が示されました。
人はつらかったことなどを抑え込んでしまう傾向があり、その抑え込んだものが原因でストレスなどにつながってしまうことが言えます。
しかし、ジャーナリングをおこなうことで抑圧されたものを吐き出すことができ、また客観的に自分の本心を見つめなおすことで心を落ち着かせることができるようになります。
手書きのメリットについて紹介しましたが、手書きをするなら「紙じゃなくてiPadでも良いんじゃないのか?」と思った人もいるかもしれません。
iPadのメモでももちろん良いのですが実は紙とデジタル機器に手書きをするのとでは実は後から見返すときに脳の働き方が変わってきます。
人間は紙に書いてあるものを読むときには脳が「分析モード」に切り替わり、目に入る情報を一つ一つ集中して見ることが出来るため、記憶の定着率が良くなります。
一方で電子機器の文字を読むときは人間の脳は「パターン認識モード」になり、送られてくる情報をそのまま受け止めるため細部にあまり注意が向きませんが、情報を得るスピードが上がります。
この違いは紙の「反射光」で文字を読むか、画面からの「透過光」で文字を読むかの違いから生まれてきます。
このような違いから、覚える必要は無いけども後で見返したいような情報はiPadの手書き、何度も繰り返し読んで覚えたい情報は手書きにするといった使い分けをすると良いです。
今回の記事では手書きによる効果を紹介しました。パソコンやスマホを使うほうが時間がかからなくて楽と思うかもしれませんが、ぜひこの機会に手書きを始めてみてください。
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